

震災市街地の復興と
収用手続の利用
「わたしたちの街並み」を残すために
平松 弘光
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本書は、震災復興事業の用地取得と土地収用手続の問題について、著者が以前Evaluation 誌No.67 に掲載した「大震災復興事業と土地収用法」を基に、2015 年に改正された大規模災害からの復興に関する法律の収用法の特例規定を、市街地の震災復興に、適用してみた場合の収用手続の流れを述べてみたもの。 大震災で被災した市街地の復興には、土地区画整理法(区画整理法)が適用されることが多い。阪神・淡路大震災(1995(平成7)年1 月17 日)で神戸市等の復興に、区画整理法の土地区画整理事業と都市再開発法の市街地再開発事業とが採用され、とりわけ区画整理事業が大規模に採用されて以来、東日本大震災(2011(平成24)3月11日)でも多くの市街地復興が、当然のように、区画整理事業で行われきた。東日本大震災での区画整理事業は、震災から数年、場所によっては10 年近くを経てようやく完成に近づいているところもある。ただ、被災地は、見違えるように立派になり、整然と整理された区画が連なる宅地に空き地が点々とあり、公営住宅に空き家が目立っていて、被災地はもともと過疎・高齢化に悩んでいた地域が多かっただけに、果たして市街地に以前の賑わいは戻ってくるのかが危惧されている。 それに対して、収用法は、道路や公園などの公共施設ごとに必要なだけの用地を個々に取得して事業に供するという働きをする法律だ。それゆえ、被災時より比較的短時間で被災者が被災地に戻ることができるので、市街地の以前の賑わいに深刻な影響を与えることは少ない。 収用手続は基礎自治体の被災市町村には近寄りがたいものだと思わせているという難点があった。しかし、 災害復興法は収用法の特例として、収用手続の土地所有者及び関係人については、登記簿に現れた土地所有者及び関係人の氏名及び住所を記載すれば足りると規定した(災害復興法36条の3第1項)。今や、所有者不明裁決の出番もほとんどなくなるに至り、震災復興という公共の用に収用法を適用することに、乗り越えるべき障壁は著しく低くなっている。
目次
第Ⅰ部 震災市街地復興事業でまちづくりはどうあるべきか
第1節 震災市街地の復興事業の二つの方式
第2節 震災市街地は事業用地取得方式で復興できる
第Ⅱ部 震災市街地の復興と土地収用手続
第1章 災害復興法が定める収用法の特例
第2章 特定被災市町村の震災復興事業と収用手続
第1節 特定被災市町村の都市施設整備事業による被災市街地の復興事業
第2節 復興整備事業での収用取得
第3節 収用裁決手続の概要と復興事業での特例
第4節 審理、裁決、裁決の効果及び実行手続
第5節 損失補償の算定基準
第6節 特定被災市町村の都市施設整備事業以外の復興事業
第3章 非特定被災市町村の震災復興事業と収用手続
第1節 都市施設整備事業と収用手続
第2節 都市計画事業の収用裁決の手続
第3節 都市施設以外の施設の復興と収用手続
資料(災害復興法・収用法・都市計画法(抄))
著者略歴
早稲田大学第一法学部卒業
東京都職員(総務局法務部、収用委員会事務局に在籍)
退職後、島根県立大学総合政策学部教授、現在、同大学名誉教授
<主要著書>
『地下利用権概論-都市の地下利用と地下の権利構造-』(公人社・1995年)
『大深度地下利用問題を考える-大深度地下利用権と土地所有権-』(公人社・1997年)
『市民立法総覧-直接請求編-』(自治立法研究会編・公人社・2003年)
『分権時代の市民立法-市民発案と市民決定』(自治立法研究会編・公人社・2005年)
「土地収用と損失補償-日中比較」(日本土地法学会編『転機に立つアジアの土地法 長崎大学経済学部創立百周年記念・共催(土地問題双書36)』所収(有斐閣・2005年)
「分譲マンション敷地の土地収用」(丸山英気・折田泰宏編著『これからのマンションと法』所収(日本評論社・2008年)
『議員条例集覧=新規政策条例編=』(共著)(公人社・2011年)
「改訂増補 土地収用の代執行」(収用代執行研究会編(プログレス・2014年)
『検証 大深度地下使用法』(プログレス・2014年)
<主要論文>
「日本との比較で見る中国の土地収用・損失補償制度の概要」・用地ジャーナル・2005年3月号所収(大成出版・2005年)
「やさしい土地収用手続【1~5】」用地ジャーナル・2012年1月号~9月号(隔月)所収(大成出版・2012年)
「日本法からみた中国の土地収用制度」(2012年島根県立大学総合政策学会「総合政策論叢」第24号)
「大震災の復興事業と土地収用法-土地問題雑感-」・Evaluation No.67(プログレス・2018年)
「所有者不明土地と土地収用法の不明裁決」・Evaluation No.68(プログレス・2019年)
